「さっきまで素直だったのに、声をかけた途端に『うるさい!』と言い返してくる」「保育園では先生の話をよく聞くと言われるのに、家では何を言っても聞こえないふり」。年長さん前後の子どもを育てていると、こうした場面に毎日のように出会います。2〜3歳のイヤイヤ期を乗り越えたと思ったら、また別の種類の反抗が始まった。そう感じる保護者は少なくありません。
一方で、かんしゃくの強さや切り替えの難しさを目の当たりにすると、「これは成長の一過程なのか、それとも発達障害の特性なのか」と不安がよぎることもあるでしょう。2024年度からは5歳児健診への国の補助も始まり、この年齢の発達に注目が集まっています。
この記事でわかること
- 5歳ごろに現れる「中間反抗期」の特徴と、イヤイヤ期との違い
- 反抗期の行動と、発達障害の特性を見分けるときの観察ポイント
- 家庭ですぐ試せる接し方と、逆効果になりやすい対応
- 心配なときの相談先と、受診までにかかる期間の目安
- 声かけを助ける道具や、親子で読める本
なお、この記事は診断を目的としたものではありません。気になる様子が続く場合は、後半にまとめた相談窓口や医療機関に早めに相談してください。
5歳の反抗期の特徴 口答え・無視・乱暴な言葉が増える理由
5歳前後から小学校低学年にかけて見られる反抗的な態度は、一般に中間反抗期と呼ばれます。2〜3歳の第一次反抗期(イヤイヤ期)と、10歳以降の思春期の反抗期のあいだに訪れるため、この名前がついています。医学用語ではなく、子育ての現場で広く使われている言葉です。
よく見られる行動
- 「なんで?」「やだ」「〇〇ちゃんはいいのに」と理屈をつけて口答えする
- 呼ばれても聞こえないふりをする、返事だけして動かない
- テレビやYouTubeで覚えた乱暴な言葉を使う
- 年下のきょうだいにだけ意地悪をする
- 着替えや片付けを「自分でやるから見ないで」と拒む
男の子は物を投げる・たたくといった行動に、女の子は言い訳や言い返しといった言葉に表れやすい、という傾向もよく語られます。ただし個人差が大きく、性別だけで決まるものではありません。
イヤイヤ期との違い
イヤイヤ期の「イヤ」は、気持ちをうまく言葉にできないもどかしさから出ることが多いと言われます。5歳になると語彙が増え、自分なりの理由を説明できるようになります。そのぶん反抗も「理屈っぽく」なり、大人の矛盾を指摘してくることも珍しくありません。
| 比較項目 | イヤイヤ期(2〜3歳) | 中間反抗期(5〜8歳ごろ) |
|---|---|---|
| 主な表現 | 泣く・寝転がる・「イヤ」の連発 | 口答え・無視・乱暴な言葉 |
| 背景 | 自我の芽生えと言葉の未熟さ | 自立心と社会性の発達 |
| 相手による差 | 誰に対しても出やすい | 親など甘えられる相手に集中しやすい |
| 大人の対応の軸 | 気持ちの代弁・気分転換 | 任せる範囲を決めて見守る |
園の先生には素直なのに家だけで荒れるのは、家庭が安心できる場所である裏返しとも考えられます。外で頑張ったぶん、家で気持ちを発散しているケースが多いようです。
反抗期と発達障害の違い 見分けるときの5つの観察ポイント

結論から書くと、反抗的な行動そのものだけで、発達障害かどうかを家庭で判断するのは難しいと考えられます。文部科学省が2022年に公表した調査では、通常の学級に在籍する小中学生のうち8.8%に、学習面または行動面で著しい困難がある可能性が示されました。決して珍しいことではない一方、反抗期の行動と重なる部分も多いため、「どんな場面で、どのくらい続いているか」を記録して専門家に伝えることが大切です。
観察ポイント1. 場所や相手による差があるか
反抗期の場合、園や祖父母の家では落ち着いて過ごせることがよくあります。家庭でも園でも同じような困りごとが起きている場合は、園の先生に様子を聞いてみるとヒントになります。
観察ポイント2. 予定変更への反応
「公園に行く予定が雨で中止」といった変化に、気持ちが30分以上切り替えられない、パニックに近い状態になるといった様子が繰り返し見られるかどうか。こだわりの強さは、自閉スペクトラム症(ASD:対人関係やこだわりの面に特性が出やすい発達障害)の特徴の一つとされています。
観察ポイント3. 指示が「わかっていない」のか「わかっていて従わない」のか
反抗期の子は、言われた内容は理解したうえで「やりたくない」と意思表示するのが特徴です。一方、2つ以上の指示を同時に出すと最初のことしか覚えていない、話の途中で別のことに気を取られてしまうといった様子が目立つ場合は、注意欠如・多動症(ADHD:不注意や衝動性に特性が出やすい発達障害)の可能性も視野に入ります。
観察ポイント4. 友だちとの関わり方
ごっこ遊びのルールを共有できるか、相手が嫌がっていることに気づけるかも、見分けるときの目安の一つです。5歳はちょうど集団遊びが本格化する時期のため、園の個人面談で聞いておくと家庭だけでは見えない姿がわかります。
観察ポイント5. 困りごとの続いている期間
引っ越しや下の子の誕生、入園・進級など、環境の変化をきっかけに一時的に荒れることもあります。目安として半年以上、場面を問わず同じ困りごとが続いているなら、一度専門家に相談しておくと安心です。
記録には、日付・時間帯・きっかけ・子どもの行動・落ち着くまでの時間をメモしておきます。スマートフォンのメモでも十分です。相談の場で「いつ、何が、どのくらい」を具体的に伝えられると、話がスムーズに進みます。
5歳の反抗期の接し方 家庭で試したい声かけとNG対応

反抗期であっても、発達の特性がある場合でも、家庭での基本的な接し方には共通する部分が多くあります。特別な道具や訓練がなくても、今日から試せるものを中心にまとめました。
効果が出やすい声かけ
- 選択肢を2つ出す:「お風呂、今すぐ入る?テレビが終わってから入る?」と、どちらを選んでも親が困らない2択にします
- 終わりの時間を目に見える形にする:「あと少し」ではなく「長い針が6になったら」と具体的に伝えます
- できた直後に具体的に認める:「えらいね」より「靴をそろえて置けたね」のほうが伝わります
- 短く、一度に一つ:「手を洗って、着替えて、カバンを出して」は3回に分けます
逆効果になりやすい対応
- 口答えに口答えで返し、言い合いを続ける
- 「お兄ちゃんなんだから」「もう5歳でしょ」と年齢や立場を理由に我慢を求める
- 「言うことを聞かないなら置いていく」といった脅しで動かす
- きょうだいや友だちと比べる
カッとなりそうなときは、親がその場を数十秒離れるのも立派な対処法です。深呼吸をしてから戻るだけで、子どもも親も落ち着いて話せることがあります。
朝と寝る前の「荒れやすい時間」の乗り切り方
反抗が集中しやすいのは、登園前の朝7時台と、夕食後から寝るまでの時間帯です。どちらも「時間が決まっていて急かされる」場面にあたります。朝は前夜のうちに着る服を子ども自身に選ばせておく、夜はお風呂・歯みがき・絵本の順番を絵カードにして壁に貼るなど、口で指示する回数を減らす工夫が効果的と言われています。
反抗期か発達障害か心配なときの相談先と5歳児健診

「相談するほどのことか分からない」と迷う保護者は多いものの、相談したから診断がつくわけではありません。実際に、話を聞いてもらうだけで気持ちが軽くなったという保護者の声は少なくありません。
| 相談先 | こんなときに | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 園の担任・園長 | 集団の中での様子を知りたい | 無料 |
| 市区町村の保健センター(保健師) | 最初の相談先を決めかねている | 無料 |
| 子育て世代包括支援センター・こども家庭センター | 育児全般の悩みとあわせて相談したい | 無料 |
| 発達障害者支援センター | 発達の特性について専門的に相談したい | 無料 |
| 小児科・児童精神科・発達外来 | 医学的な評価や診断を受けたい | 保険診療(自治体の子ども医療費助成の対象になる場合あり) |
発達障害者支援センターは、各都道府県と政令指定都市に設置されています。お住まいの地域の窓口は、自治体のホームページで確認できます。
5歳児健診は2024年度から国の補助対象に
こども家庭庁は2024年度(令和6年度)から、5歳児健診を国庫補助の対象事業に位置づけました。1歳6か月健診や3歳児健診では気づきにくい、集団生活での困りごとや言葉・社会性の発達を確認し、就学前に支援につなげることが目的です。支援事業が始まる前の実施率は全国で約14%にとどまっていたとされ、現在は市区町村ごとに導入が進んでいる段階です。
健診の有無や時期は自治体によって異なります。案内が届かない場合は、住所のある市区町村の母子保健担当課に問い合わせてみてください。
受診までに数か月かかることもある
医療機関での相談を考えている場合は、早めの予約がおすすめです。総務省が2017年に公表した調査では、発達障害を専門的に診る27の医療機関のうち、初診までの待機期間が3か月以上半年未満の機関が12(44.4%)、半年以上の機関が2(7.4%)あり、最長で約10か月待ちの例も報告されました。年長の秋に気になり始めた場合、受診が小学校入学後にずれ込む可能性もあります。予約を入れたうえで、待っているあいだに保健センターや支援センターに相談しておく、という並行の進め方が現実的です。
療育を利用する場合の費用
診断の有無にかかわらず、自治体が必要と認めれば児童発達支援(いわゆる療育)を利用できる場合があります。2019年10月からは、満3歳になって最初の4月1日から小学校入学までの3年間、児童発達支援の利用者負担が無償化の対象です。手続きは不要で、給食費や教材費などの実費のみ自己負担となります。
小学校入学を見据えた放課後の預け先や学童の情報は、小1の壁対策2026 学童の申し込み時期・預け先の費用比較でまとめています。
5歳の反抗期に役立つアイテムと親子で読みたい本
声かけの工夫を続けるうえで、道具や本の力を借りるのも一つの方法です。ここでは、保育や療育の現場でも使われることがあるアイテムと、保護者に長く読まれている本を取り上げます。
Time Timer タイムタイマー 8cm TT03B-W
残り時間が赤い円の面積で表示される視覚タイマーです。時計の針がまだ読めない5歳児でも「赤が消えたらおしまい」と一目で理解でき、「あと5分って言ったでしょ」という言い合いを減らすのに役立ちます。8cmサイズは手のひらに収まり、外出先にも持ち歩けます。価格はTime Timer タイムタイマー 8cm(約6,600円)が目安です。
Time Timer New タイムタイマー 8cm 60分 TT03B-W【正規品】【アラーム・マグネット付き】3インチ 時間管理 ギフト プレゼント 誕生日
6,578円 (税込)
中川ひろたか『おこる』(金の星社)
「どうしておこるんだろう」と子どもの目線で怒りの気持ちを描いた絵本です。読み聞かせのあとに「どんなときにおこりたくなる?」と話すきっかけになり、感情を言葉にする練習につながります。価格は絵本 おこる 中川ひろたか(約1,540円)です。
島村華子『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
モンテッソーリ教育やレッジョ・エミリア教育を研究する著者が、ほめ方・叱り方の具体的な言い換え例をまとめた一冊です。「すごいね」の代わりに何と言えばいいか、といった実践的な内容が中心で、口答えへの返し方に迷うときの参考になります。価格は自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方(約1,760円)です。
佐々木正美『子どもへのまなざし』(福音館書店)
児童精神科医として長く子どもと関わってきた著者による、子育ての基本姿勢を説いたロングセラーです。発達障害についても触れられており、「この子はこの子のままでいい」と肩の力が抜けたという感想が多く寄せられています。価格は子どもへのまなざし 佐々木正美(約2,090円)です。
よくある質問(5歳の反抗期と発達障害)
Q1. 5歳の反抗期はいつまで続きますか?
個人差がありますが、小学校低学年の7〜8歳ごろまでに落ち着くことが多いと言われています。その後、10歳前後から思春期の反抗期に移っていく子もいるようです。
Q2. 家では荒れるのに、園では問題ないと言われます。発達障害の可能性は低いですか?
園で困りごとがない場合、家庭への甘えから出ている反抗の可能性が考えられます。ただし園で頑張りすぎて家で疲れが出ている子もいるため、気になるときは担任の先生と家庭での様子を共有しておくと安心です。
Q3. 叩いたり物を投げたりするときはどうすればいいですか?
まずは危険な物を遠ざけ、けがを防ぐことを優先します。落ち着いてから「叩くのはダメ。嫌だったら『やめて』と言おうね」と、代わりの行動を短く伝えます。興奮している最中に長く説明しても届きにくいため、タイミングを分けるのがコツです。
Q4. 5歳児健診の案内が来ません。受けられないのでしょうか?
5歳児健診は自治体ごとに導入状況が異なり、まだ実施していない地域もあります。その場合でも、保健センターでの発達相談は利用できることがほとんどです。母子保健担当課に問い合わせてみてください。
Q5. 発達障害の診断がつくと、普通の小学校に通えなくなりますか?
診断があっても、多くの子どもが通常の学級に通っています。必要に応じて通級指導教室や特別支援学級を利用する選択肢もあり、就学先は就学相談を通じて保護者と学校・教育委員会が話し合って決めていく流れです。
Q6. 反抗されるとイライラしてしまい、自己嫌悪になります。
毎日向き合っていれば、イライラするのは自然なことです。怒ってしまったあとに「さっきは大きな声を出してごめんね」と伝えるだけでも、子どもは関係が修復できることを学びます。疲れがたまっているときは、一時預かりやファミリー・サポート・センターを利用して休む時間をつくるのも大切です。
5歳の反抗期と向き合うための次の一歩
5歳の反抗期は、子どもが「自分で考えて、自分で決めたい」と思えるようになった成長の証でもあります。一方で、場面を問わず困りごとが続いている、切り替えの難しさが目立つと感じたら、ひとりで抱え込まずに相談先を頼ってください。
- 今日から:選択肢を2つ出す声かけと、終わりの時間を目に見える形で伝える工夫を試す
- 今週中に:気になる行動を「いつ・何が・どのくらい」でメモし始める
- 心配が続くなら:保健センターに電話し、5歳児健診の有無と発達相談の予約方法を確認する
- 医療機関を考えるなら:待機期間を見込んで、早めに予約を入れておく
反抗期か特性かを見極めることより、目の前の子どもが「わかってもらえた」と感じられる時間を少しずつ増やすことが、どちらの場合にも共通する一番の近道です。
